2021年7月29日に石川さんのビデオメッセージが中央本部から配信されましたので一部を紹介します。
石川一雄さん
コロナが明けたら元気に活動するため家の中で1年5か月間切磋琢磨に運動をしてきた。その成果として実際には筋肉モリモリであります。科学の力によって私の無実が明らかになり、この3次で無罪を勝ち取れなかったら私はたぶんあの世へ行ってしまうのではないか。そのような思いでコロナ感染を非常に恐れていた。幸いなことにいまは2回目のワクチンを打ってもらえました。解放同盟へ相談して今重要な時期でありますので多くの皆様方のご支援を賜るべく各地へお願いに回りたいと常々思っていましたが今回は断念しました。
コロナの中で自宅にいるときに事件当日、逮捕されたときの新聞報道を読み非常に憤りを感じました。当時のマスコミはひどく「石川一雄は学校へ行かずに飲み屋街を闊歩した」、「中学校をさぼって…」と書いてあり、さぼったのではなく家が貧しくて学校へ行きたくても行けなかった。越後獅子という歌を聴き、10歳の時に子守奉公でつらかったことを歌の意味が良く分からなかったけどばちで殴られたんだなと思い出して涙を流した。自白によって被害者の持ち物が発見されたとされたが今は科学の力によってその証拠が偽物であったことが証明されている。鑑定者を法廷に呼んで証人尋問しなければならない。何としても第三次で冤罪をはらすために法廷に証人調べをしてもらうようにそのためには全国のみなさんの声が必要です。これからも全国各地にお願いに回っていきますのでその時は声をかけていただきますようお願いいたします。
石川早智子さん
オリンピック憲章の中に人権尊重があるが、今コロナ禍の中で命の危険を晒してでもオリンピックを強行した。多くの人に自粛や我慢を強いながら国家権力はお祭り騒ぎ状態にある。オリンピックが始まると熱狂して国民はすべて忘れて支持率があがると思っている。国家の暴走を止めることが大事だと思う。そのためには今の堕落しきった政権を変えること。それが人権尊重の政治につながり狭山の闘いにつながる。
7月9日石川一雄が起訴された日を迎え落ち込んでいた。私は労働組合の活動の中で狭山事件を初めて知り、涙を流した。1977年8月9日職場で昼ご飯を食べていた時にテレビで狭山事件上告棄却のテロップが流れたのを見たとたん胸がいっぱいになり食事がのどを通らなかったのを昨日のように思い出した。今、たくさんの人たちが様々な場所で闘いを展開してくれている。狭山の闘いで私は生きる力をもらえた。証人喚問の時期にきている。諦めず闘い続けていきたい。
石川一雄さんが不当逮捕された日の5月23日に毎年狭山市民集会が開催されていたが今年も新型コロナ感染拡大にともない集会が中止になった。石川一雄さん、石川早智子さんがビデオメッセージで支援を呼び掛けているので紹介する。
石川一雄さんは「今年こそは勝利するのではないか」とのべ「検察官は弁護団が出した数々の新証拠に対しての反論反証をするということから若干伸びるのではないかと思うが無実を勝ち取るまで不屈の精神で闘っていく決意。三次で勝利するために、今後も懸命に闘いを続けていきたい。えん罪が晴れるまでは皆様方のお力添えをさらにお願いして訴えに変えたい」などとのべた。
2018年8月に提出した下山第二鑑定では石川さん宅で発見された万年筆で書いた数字のインクと被害者が事件当日に書いたペン習字浄書のインクなどに含まれる元素を調べ被害者のインクからはクロム元素が検出されたが発見万年筆からは検出されなかったことを科学的に証明した。検察は反論も反証もできず、2020年5月に「クロム元素が検出されなかったのは万年筆の水洗いをした上で別のインクを入れたからである」と主張するがそれを裏付ける証拠は何もない。
そのことに対して早智子さんは「根拠もない水洗い説に怒り心頭で腹が立って仕方ない。冷静に考えると根拠のない説を突然出さなければいけなくなったのは狭山の闘いが検察をここまで追い込んでいると考えられることかもしれない」とのべ、「各地で狭山の闘い熱い思いに鼓舞されている。裁判所に鑑定人尋問、事実調べをおこなえという声を届けていただきたい。声が大きいほど狭山は動く。真実は必ず明らかになる」と支援を訴えた。
2009年の三者協議で裁判長が証拠開示を勧告し、これまで191点の証拠が開示されてきた。弁護団は開示された証拠をもとに数々の新証拠を提出。開示された証拠そのものも新証拠として提出してきた。
中北龍太郎弁護士は新証拠について説明。
裁判では石川さんが作成した図面をもとに被害者の「カバン」が発見されたとして犯人しか知り得ない「秘密の暴露」にあたるとされた。しかし開示された鞄発見に立ち会った捜査官5人連盟の捜査報告書には鞄を捨てた場所は特定されていないことがわかり発見経過に疑問が残る。犯人しか知らない秘密の暴露がまったくでたらめなことが明らかになった。他にも証拠開示された取り調べの録音テープによって自白の強要、誘導が明らかになり自白調書に信用性がなく石川さんの無実が明らかになったことや足跡、スコップ、万年筆関連などの新証拠を紹介した。
中北弁護士は最後に「裁判所に鑑定人請求をしてその実現を認めさせて実施に踏み込んでいきたい。非常に重大な局面に入っていく。今後も支援を」と呼び掛けた。
また、2021年6月1日には、えん罪被害者の仲間として菅家利和さん、桜井昌司さん、鎌田慧さんもメッセージを寄せている。昨年2月に余命一年と宣告を受けた桜井さんはますます元気になっているとのべ、「裁判所を動かすのは社会常識しかないと思う。科学的事実や真実を無視する判断を許さないためにもみなさんで声をあげて80を超えた石川さんの無実を取り戻したい」と支援を呼び掛けた。鎌田さんは「犯人が書いた脅迫状と当時の石川さんの筆跡はまったくちがい、脅迫状が無実を示す証明と訴えていきたい。無罪判決を勝ち取るまでがんばっていきたい」などと話している。桜井さんはマガジンハウスから著書「俺の上には空がある広い空が」を出版しその紹介
のビデオメッセージも寄せている。
新型コロナウィルスの出現に因って、私自身糖尿病であることから、本来全国各地に支援要請のお願いの活動をしなければならないのに、足止めされ、残念無念の思いを抱きつつ1年5か月が経過してしまいました。当然、新型コロナウィルスの終息時に備え、万全の構えでおりますが、現在においてもなお感染拡大傾向にあり、溜息の出る日々であります。しかしながら、支援者皆様の、狭山の闘いを止めないとの強い熱意の下で、各地での闘いは継続されており、心強く、且つ感謝と相済まない気持ちで一杯です。
特に大きな山場であるこの時期は裁判所への要請行動が効果的であると思われますが、私自身が率先して高裁前に立つこともできず、残念な気持ちを禁じえません。ずっと開かれてきた5・23狭山中央集会も、昨年に引き続き、コロナ禍で、中止を余儀なくされました。残念ではありますが、「いのち」を守ることを最優先に考えれば、仕方のないことでありました。
ただ常に疑心暗鬼を払拭出来ないのは、私の無実を示す証拠がたくさん存在する中で、再審の門を開こうとしなかったこれまでの裁判官の姿勢であります。言及するまでもなく、近年、無期刑の受刑生活を強いられた6人の人たちが再審無罪になりました。この人たちは、最高裁で有罪と認定され、10年20年、30年と無念の受刑生活を余儀なくされましたが、無実の人を有罪に追い遣った裁判官はなんら、反省もせず、謝罪もしないことに満腔の憤りを覚えます。
冤罪者は、一人の人間の一生だけでなく、家族も巻き込み、差別、偏見、悲しみ、怒りなど、塗炭の苦しみの中で生きざるを得ない状況に追い込まれます。狭山事件のように、被差別部落の者が冤罪に巻き込まれたときは個人の問題でなく、被差別部落全体が犯罪者集団の様な扱われかたもされてきました。公平で公正であるべき裁判官が検察側に軸足を置き、忖度し、結果として、誤った裁判で有罪にしたのですから、司法の府としての黒い法衣を纏う資格などないと、断罪せねばならないと思うのです。
私の裁判でも第2次再審までは、最高裁が関わったが、事実調べもせず、確定判決を追認踏襲したに他ならないことは、皆さんも知っての通りです。今の裁判官には、過去の過ちの反省の上に立って、鑑定人尋問をおこなうなどして、弁護団より提出された新証拠を徹頭徹尾調べつくし、再審の門を開いて頂きたく願わずにはおれません。
この狭山第3次再審こそ、私は乾坤一擲で臨む所存でありますので、何卒皆様も感染防止に十分に気を付けられた上で、本審で冤罪が晴れますよう最大限のお力添えを賜りたく、衷心よりお願い申し上げます。
5・23石川一雄不当逮捕58カ年糾弾集会へのご挨拶に変えて失礼いたします。
今の司法金城鉄壁侮らず 証拠を携え緊褌一番で臨む
2021年5月 石川 一雄
※金城鉄壁・・・防備が極めて堅固であること/※緊褌一番・・・気持ちを引き締めて事に当たる