狭山再審弁護団は犯人が残した脅迫状の筆跡が99.9%の確率で石川さんと別人のものだとする新たな鑑定書を2018年1月15日に裁判所へ提出しました。
弁護団はコンピューターを使って筆跡鑑定を研究する東海大学の福江潔也教授に鑑定を依頼。犯人が残した脅迫状でくり返し使われていた「い」「た」「て」「と」の4文字を石川一雄さんの筆跡と比較したところ、脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡は形が大きくずれていて、99.9%の確率で別人のものだと考えられると証明しました。
脅迫状と石川さんの筆跡のちがいはコンピュータを使わなくても誰が見ても明らかで、警察側の鑑定のデタラメさがあらためて証明されたことになります。
その後の記者会見で石川一雄さんは「学校に行けず、当時は読み書きができなかった私が脅迫状を書けるはずがない。その通りの鑑定が出た。一日も早く再審を認めてほしい」と訴えました。
石川一雄さんが逮捕当日に書いた上申書が2010年5月に47年ぶりに開示されました。1963年5月23日付け上申書は、部落差別の結果、教育を十分に受けられず、書字能力を身につけていなかった当時の石川さんの非識字の状態がはっきりと現れています。
上の画像は1963年5月1日に被害者宅に届けられた脅迫状です。
狭山事件では、犯人が残した唯一の物的証拠は脅迫状しかありません。
脅迫状を石川さんが書いたとする筆跡鑑定書により、有罪の客観的証拠とされました。
上の画像は右側が犯人が書いた脅迫状で左側が石川さんの上申書の筆跡です。
画像左の石川さんの文字は筆圧が強く、文字を書き慣れていない人が書く文字といえます。
右の脅迫状の文字は漢字のあて字はありますが、全ての文字をまちがうことなく、書き慣れた人の筆跡です。
画像の上は脅迫状、下は石川さんの上申書の筆跡です。
脅迫状にあった「金二十万円」を石川さんは「にゆまんい」としか書けない書字能力であったことがわかります。
開示された取り調べの録音テープでは石川さんが文字を書くときのやりとりがあり、警察官から一字一字文字を教えてもらいながら書いている様子がわかりました。
弁護団は改めて筆跡鑑定を行い、上申書と脅迫状は同じ人が書いたものではないことを明らかにしました。
画像の上は脅迫状、下は石川さんの上申書の筆跡です。脅迫状には「近所」のことを「気んじょ」、「警察」のことを「刑札」と書くなどあて字が多くあります。
下の画像の「しちよんどの」とあるのは「署長殿」(しょちょうどの)と書いた石川さんの文字です。
脅迫状は運筆が速く、崩した書き方で筆圧に抑揚がありますが、文字を書き慣れていない石川さんの文字は運筆が遅く、筆圧が強いなどの特徴があり、同じ人が書いた物ではないことは明らかです。